角川書店/1997年
人と会話するのが不得手な私は、仕事に写真を選んだ。それでも、言葉はとても必要。ある日、無口な花を撮ってみようと思った。私だけの時間と空間のなかで、限りなく“綺麗”な世界が見たかった。写真が増えてゆくにつれ、無口のはずの花たちがおしゃべりを始めた。そして、橋本さんが、その言葉を書きとめてくれた。美しく、ちょっと妖しい物語が生まれた。
<写真集あとがきより>
写真家・おおくぼひさこの作品には、饒舌すぎない、けれども凛とした主張がある。20年以上にわたって交遊のある橋本治氏と組んだこの作品集は、「花」というもっともエロティックで繊細なモチーフを、その清楚な視線で鮮やかに切りとったものだ。ガーベラ、ヒマワリ、アマリリス、カサブランカ…。『DARK MOON』というタイトルどおり、“高潔なエロティシズム”が五感に強烈にしのびこむ。
「WHAT'S IN?」'97年3月号より