「そんないろんな人たちの中に、(これは俺は“ストレンジャー”って呼んでいたんだけど…)いろんな人たちの中に、時々立ち寄る近所のパン屋さんの娘で、歳は僕と同じぐらいの女の子がいた。何か仕事をしてたのか、まだ学生だったのかなんてことは聞いたこともなかったが、とにかく何故か英語がペラペラで、外国人の友達なんかも一緒に僕の部屋に突然現れたこともあったりした。自分ちの美味しいパンを持って来てくれたり、どういう訳かセキセイインコなんてものを突然置いていったり…、そんな不思議なタッチの女の子であった。別に恋人とかガール・フレンドとかいったレベルの付き合いじゃなくて、なんというか一緒に居て居心地の悪くない、つまりは仲良しだったのだ。彼女は特別音楽が好きって訳でもなくて、ロック少女なんていうムードとは正反対なようなタッチのタイプであった。何の前ぶれもなく僕のその隠れ家へ、いつとはなしに顔を出した彼女。いつも音を絶やすことのなかった僕の部屋に居るうちに、そんなロック少女でもない彼女にもお気に入りのレコード達が何枚か出来たようだった。当時僕がよくかけていたレコード達の中で彼女が気に入ったアルバムがいくつかあった。それはランディ・ニューマンっていう人の『12ソングス』、ジミ・ヘンドリクスの『アスシス: ボールド・アズ・ラヴ』、それからリロイ・カーっていう人の『Blues Before Sunrise』そんなアルバムだった。理由はわからない。英語を理解出来た彼女だったから、それらのレコードの唄たちが彼女の何かに触れたのか、あるいはヘンドリクスのギターやリロイ・カーのピアノといったサウンドやトーンに魅かれたのか、わかんない。彼女はそれらのレコードをある日「貸してくれる?」そう言って持って行った。多分テープにでも録音したかったのだろう。やがて仕事で全国を飛び回っているうちに、その年の暑い夏はあっという間に終わった…。」
まあ、なんてな話なんです。えー、これはこの後まあ、ヘンドリクスの話に戻ったりして、この話のエンディングは…(笑)なかなかなエンディングで終わってしまうんですけども。それはまあ、本でも見つけたら読んでください。という訳で、このリロイ・カーっていう人、自分にとっても思い入れが深い、そしてBLUES界にとっても、ほんと先駆けの人っていうのかな。若くして亡くなったけど素晴らしいピアニストそしてシンガーでした。リロイ・カーをまず聞いてね、それからね…今日はだから、二人聞いてよ、この人もどうしても紹介したくてさ。この番組始まった時に最初にかけたのがロバート・ジョンソンでした。(♪ギターを弾く)『クロスロード・ブルース』。ある意味でBLUESの代表の一人、ロニー・ジョンソンっていう人なんだよね。ちょっと名前、似ているけど。どうしてこれをかけたかったかっていうと、俺BANDと別に一人でやっている時にロバート・ジョンソンみたいなスタイルってのはとても参考になるんだよね。一人でベースを出したりとか(♪ギターを弾く)こういう弾き方、とても勉強してます。とーてもあんな風には弾けないけど。ロニー・ジョンソンっていう人はそういう弾き方じゃないんですね、一人でやっても。(♪ギターを弾く)こう…なんていうか唄いながら、コール&レスポンスっていうの? 自分で合いの手を入れるっていうか三味線じゃないけど。つまり、このスタイルはB.B.KINGさん、えーこの番組ではお馴染みだけどB.B.KINGさんにとても引き継がれたっていうか、B.B.は「自分のルーツはロバート・ジョンソンではない」っていうんだよね。このロニー・ジョンソンが自分にとって大きい人だって。何ていうのかな、同じギタリストでも違いというかな、そういうことをせっかくだから聴いてもらいたくて。このロニー・ジョンソンって人はビッグ・バンドで演って、ちょっとジャズのムードもあったりして。ジャズで有名なデューク・エリントンさんなんていう親分とか、いろんな人とダブル・ビッグ・バンドでも演ったりして、とても素晴らしいアーティストです。ギター一本でもね、とても歌心があって、夜中なんかに…今日かける曲なんかのアルバムはとてもいいです、ギター一本で。そのじゃあ、二人を聴いてください。俺が二十歳時代、聴きまくったリロイ・カーさんは「Midnight Hour Blues」ぴったりですねえ〜。それからロニー・ジョンソンがしっとり唄います、彼は「Another Night to Cry」今日は特別に2曲聴いてください。イエイ。